清水和音、大好きなピアニストであります。
技巧が過ぎる故に、弾いている曲が全部簡単な曲に聴こえてしまうという摩訶不思議なテクニックといい、多彩な表現力といい、各方面から絶賛やら批判やらをされまくる毒舌ぶりといい、すべてが素敵です。
素敵といえば、何やら若かりし頃は王子様のような風貌で、世の女性たちをキャーキャー言わせていたようですが、今はまるで別人でございます。
もはや違う意味でキャーキャー言われてしまいそうな風貌と体型も、何とも味わい深くて素敵です。
私の中では「たるんだ大和田伸也」です。あくまでも褒め言葉です。
そんな素敵な和音さまの1番好きなところは、「三大ピアノ協奏曲の響宴」、「ラフマニノフ ピアノ協奏曲 全曲演奏会」、「まとめて聴ける、ベートーヴェン三大ソナタ」などなど、おバカな企画をたくさんやってくれるところ。
普通の人間であれば、1公演で協奏曲を1つ演奏するのも神経をすり減らすところを、怒涛の難曲をシレっとこなし、アンコールまで弾き倒してそそくさと帰って行くあの感じ、たまりません。
2011年に、ラフマニノフのピアノ協奏曲第1番から第4番までと「パガニーニの主題による狂詩曲」の合計5曲を弾いてくださった演奏会では、終わったころには観客も全員ぐったりで、私の隣のおじいちゃんはこちらが心配になるほど老けこんでおりましたが、和音さまはまるで、その後に飲み会でも控えているかのような軽やかな足取りで立ち去って行ったのでした。あっぱれ。
さてさて、前置きがかなり長くなりましたが、今回の曲目はこちら。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 op.73 「皇帝」
ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第2番 ハ短調 op.18
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 op.23
・・・こんなの1回のコンサートで演奏する人、いませんよねぇ。腱鞘炎やら関節炎やら、色々と発症しそうです。
でも、そこは和音さま。それぞれの曲をすばらしい表現力と圧巻のテクニックをもって弾き倒し、アンコールではリストの「ペトラルカのソネット 第104番」までお弾きになって、これまた足早にお帰りになりました。きっと打ち上げか麻雀があるに違いない。
この日のコンサートは、指揮の梅田俊明さんと東京フィルハーモニー交響楽団の演奏もすばらしく、ソリストと楽団という感じではなく、すべての楽器がその時々で日向にも影にもなるような一体となった演奏で、とても聞きごたえがありました。
指揮の梅田俊明さん、最初は痩せた蛭子能収にしか見えなかったのですが、今回の演奏を聴いてすっかりファンになってしまいました。
そんなわけで、今回もすばらしい音楽を堪能させてくれた和音さま。次回のおバカ企画も楽しみにしています。