ブーニン、中村紘子、山下洋輔の三大怪獣 地球最大の決戦


7月26日、ブーニン、中村紘子、山下洋輔という超強力個性派ピアニストが一堂に会してコンサートをする!というわけで、サントリーホールに行ってまいりました。このコンサートは、震災孤児チャリティーコンサートという事で、日本側がブーニンをゲストで呼んだのかと思いきや、何と主催者はブーニンで、中村紘子と山下洋輔がブーニンに頼まれてゲストで出演しているというから、こりゃまたすっかりたまげました。

コンサートが始まる前にブーニンから、「日本を復興する少しでも手助けがしたい、自分は日本が本当に大好きなんです!」という挨拶があり、紘子さんや山下洋輔も出てきて、「とにかく楽しい熱いコンサートにしたい!」とメッセージがあり、それぞれの思いが言葉として観客に伝えられ、普通のコンサートとはまた違うスタートを切ったのでした。

まず始めの演奏は、主催者ブーニン。次に続く2人に花を持たせようという心意気なのか、いつものブーニンらしい手に汗握る緊張感、表現力、演奏力という感じではなく、子供たちにも楽しめるような穏やかで優しい演奏でした。それはそれですごく良かったのですが、個人的には、やっぱりブーニンはドラマチックな演奏をしている方が好きだなぁ。

その昔、19歳のブーニンが弾くショパンを初めて聴いた時は、子供ながらに大感動し、それと同時にどう見ても40歳くらいにしか見えないブーニンの風貌とおじさんメガネのデザインにも度肝を抜かれたものでした。まぁ、今もビジュアルはその時とほぼ変わっていませんが。やっと実年齢が追いついたか・・・。でも、情緒的な演奏はやっぱり健在で、賛否両論ありますが、私はブーニンの演奏が大好きです。

さてさて2人目は中村紘子さま。出てくるだけで貫録というかオーラというか妖気というか、すごいです。顔を見ると何もしてなくても、つい「す、す、すいません!」と謝りたくなります。大物ってこういう人を言うんだろうなぁ。

あ、今の今まで忘れていたのですが、そういえばこの日の指揮がひどかったんです。あんまりこういう事は書かない主義なのですが、あまりにあまりにひどすぎてステージに降りて行って注意をしたいくらい、指揮がひどかったんです。やる気ゼロ。何の感情もなく指揮棒をただ縦横に振るだけ。いかんだろ、それは!交通整理じゃあるまいし!!

・・・と、怒りのあまり毛が抜け落ちそうになる私でしたが、そこはさすが紘子さま。指揮者の事は思いっきり無視し、ピアノを弾きながら完全に体をオケの方に向け、楽団員にガンを飛ばしながら気迫の演奏。オケが気の抜けた演奏なぞしようものなら、後でハイヒールで殴りつけにいきそうな勢いです。いやたぶん、行くでしょう。そんなわけで、ブーニンの時と同じ指揮者、同じオケなのに、紘子さまの気迫と鬼の形相により、見違えるような演奏になっていて、「わぁ、これぞライブだなぁ!」と感動してしまいました。

紘子さまはベテランなだけに色々と言われたりしていますが、いつ観ても思うのは、この方の観客に対しての「絶対にすごい演奏を聴かせてやる!あなたたち、ただでは帰らせないわよ!」という気迫と気合いって半端じゃないなぁということ。「1クールのレギュラーより1回の伝説」。ピアニスト界のエガちゃんですね。そういうのを、「重鎮」という立場にいながらも、ずっとやっているってすばらしいと思います。

そして3番目は山下洋輔。「あんたがたどこさ」をモチーフに、自身で作曲したという「仙波山」を、上記の指揮者とオケと共演。ここまでアバンギャルドな曲になると、もはや気の抜けた指揮者の有無なぞ関係なく、オケも必死に演奏するので、洋輔さんとオケとのいい感じのせめぎ合いが観られてとっても楽しい演奏でした。

いやぁ、それにしても・・・ピアノ上手すぎ!!こんな事書くのも失礼な話ですが、あまりの技術力の高さに、開いた口がふさがらず、ショパンやラフマニノフもびっくりの技巧的な楽曲を、ニコニコと楽しそうに優雅に弾くお姿が、あまりにまぶしかったです。白のタキシードもまぶしかったです。イカす。

そして最後は、ブーニンと紘子さまの連弾。モーツァルトの「2台のピアノのためのソナタ」です。今回は2楽章の演奏でしたが、1楽章は「のだめカンタービレ」で、のだめと千秋先輩が連弾していたあの曲です。のだめと千秋先輩が、ブーニンと紘子先輩にチェンジ・・・。ゾゾゾ・・・・・・。

いや、そんな事はどうでも良いのですが、演奏を始める前にブーニンから曲の説明があり、
「今回僕は初めて第2ピアノを担当し、紘子先生の伴奏をさせていただくことになりました。」
というと、すかさず紘子さまが、
「あら、あなた、第2ピアノは伴奏なんかじゃなくってよ。第2の方が難しいんでございますわよ。」
とピシャリ。それを受けブーニンが弱々しく
「激励のお言葉、どうもありがとうございました・・・」
と言って演奏を始めたのがあまりに印象的でした。恐るべき縦社会・・・。演奏は、普通に良かったです。

そんなわけで、普段まとめて聴ける機会はまずないであろう超個性派、超大物の3人の演奏、三者三様で本当にすばらしく、3人合わせればピアノだけで国1つくらい滅ぼせるんじゃないか・・・というくらい、ものすごいパワーがありました。いや~、いいもの見せていただきました!

■ プログラム ■

1: モーツァルト ピアノ協奏曲 第23番 イ長調 K.488 演奏:S.ブーニン
2: グリーグ ピアノ協奏曲 イ短調 作品16 演奏:中村 紘子
3: 山下 洋輔 ピアノ協奏曲「仙波山」 演奏:山下 洋輔
4:モーツァルト 2台のピアノのためのソナタ ニ長調 K.448 演奏:中村 紘子 & S.ブーニン

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